第1回世界一周後半 no.33 – チェンライ近郊ツアー その3:カヤン首長族の村とチュイフォン茶園【2025年12月7日】

チェンライで人気のチュイフォン茶園 タイ
チェンライで人気のチュイフォン茶園

「カヤン首長族の村」とは

次に向かったのはカヤン首長族の村(Kayan Long Neck Village)です。この村では、実に色々なことを考えさせられました。ツアーガイドの説明や疑問に思ってしつこくガイドに質問して教えてもらったこと、後刻webで調べた結果などを織り交ぜながら、この村について私が理解したことを書きたいと思います。

そもそもカヤン首長族の村とは、ミャンマーで迫害を受けタイに逃れてきたカヤン族の人々が住む集落です。カヤン族の女性は首に真鍮製のリングを重ねて身に着ける独特の文化があり、この結果外見上は首が長く見えます。タイ側に逃れてきたカヤン族の一部が、1980年代後半以降、観光客にこうした文化を見せるようになり、そうした施設として「カヤン首長族の村」が形成されました。

私が訪れたのはチェンライ(Chaing Rai)近郊にある「カヤン首長族の村」です。観光ツアーのコースに組み込まれており、私自身が現地で入場料を払ってはいません。Web情報によれば、個人入場の場合THB300程度の入場料が求められるようです。また、タイ北部には複数の「カヤン首長族の村」が存在していますが、総数はわかりません。

チェンライ近郊のカヤン首長族の村のメイン・ストリート。両側に並ぶのは土産物の販売店です。

住民にとっての日常が混在

村は入場料金をとって観光客に自分たちの文化や生活様式を見せる観光施設ではありますが、同時に実際の生活の場でもありました。通りの裏手では小さな子供たちが遊んでいましたし、料理や洗濯をする女性の姿も目にしました。それは優れて日常的な鄙びた農村の光景です。

この地に住む人々に特有な文化を色濃く映す光景も目にしました。下の写真は「精霊の門」と呼ばれ、集落の入口に設置されています。門の両側には人間を象った木像が、男女を区分けて置かれています。門が人間が暮らす村の領域と、精霊や野生動物が存在する外の世界との境界を示します。心が邪な人間はこの門を越えて人の領域には入れないのだそうです。

集落の入口にある「精霊の門」。心が邪な人間はこの門を越えて中には入れません。

村を訪れたのは昼間です。女性と子供は見かけましたが、集落内に大人の男性は殆どいませんでした。ガイドに聞いたところ、男性は集落の外に働きに出ることが多いとのことです。また、周辺の僅かな土地で農業を営んでいるとのことでした。生活は非常に不安定、それが実態です。観光施設としての村への入場料が生活の支えとなっている現実を感じざるを得ませんでした。

集落の畑の一部。真ん中に写っているのは空中に浮いた案山子です。

タイ国内での扱い

カヤン族に限らずミャンマーに住む多くの少数民族が故郷を追われタイに逃れています。背景には、ミャンマーの中央政府・軍と少数民族との対立があります。ミャンマーでは独立後、各地の少数民族が自治権や民族としての権利を求め、武装勢力を組織して中央政府・軍と戦ってきました。こうした紛争は現在においても続いており、軍による強制移住や強制労働、殺害などが報告されています。その結果がカヤン族を含む多くの住民のタイへ逃避です。

カヤン族を含む多くの避難民がタイ国籍を取得威することは容易ではありません。国籍や法的身分がない場合、移動、就学、正式な就労などに制約があり、特に国境地域から自由に移動して仕事を探すことは事実上困難です。タイで生まれた第二世代以降も、出生しただけで自動的にタイ国籍を得られるわけではなく、教育や就労、移動などで大きな不利益を被っています。

この状況は変わりつつあり、2024年10月にタイ政府は、永住資格や国籍取得への道を大幅に広げました。新しい制度では対象となる長期居住者約34万人に永住資格への道を開き、タイで生まれた子ども約14万人にはタイ国籍取得への道が設けられました。実際、2025年12月までに1万2,000人以上がタイ国籍を取得したとされています。

若い世代の今後

下は、リングを装着した女性との写真です。写真は自由に撮っていいとのことでした。一緒に写っている女性も観光客相手は慣れたもの、ニコニコと撮影に協力してくれました。一方で、首にリングを装着するという文化的風習を受け継がない若い世代も最近では多いとのことでした。

写真は自由に撮っていいとのこと、ツアー参加者に撮ってもらいました。

無国籍状態が解消され、永住権だけでなくタイ国を取得できた若い世代はこれからどう生きていくのだろうか。この独特な文化的風習を新しい世代は受け継ぐのか、それとも廃れていくのか。首を長く装った女性との写真を撮ってもらいながら、そんなことを考えました(世代が若くなるほど引き継がないという選択が増えているようです)。

リングの装着を民族的アイデンティティや伝統として肯定的に捉えて引き継ぐのであれば、それは肯定的に捉えたいと思います。願わくば、観光客を呼ぶための手段として引き継がざるを得ない事態にはなっていないことを願うばかりです。

チュイフォン茶園のこと

カヤン首長族の村のあと、チュイフォン茶園に連れていかれました。チュイフォン茶園は、タイ人が経営する1977年創業の大規模な茶業企業です。約190ヘクタールの自社茶園を有し、栽培・加工・販売を一貫して行っています。美しい茶畑を眺められるカフェが併設され、自社製品を売るショップも充実していました。農業と観光を組み合わせた現代的な経営を行い、それが上手く回っている。そんな感想を持たせる茶園です。

併設されたカフェ。とても洒落た造りです。
カフェからはよく整備された茶畑が望めます

私は併設されたショップでお茶の葉を2パックほど買いました。また、カフェでは抹茶アイスを食べました。当初はツアーにありがちな、有無を言わせない土産物屋への立ち寄りかと思いました。実際は違いました。セコい私がお金を使ったわけです。十分に価値のある訪問場所でした。同時に、カヤン首長族の村のすぐ後に訪れただけに、事業体としての両者の置かれた差異に思いを馳せずにはいられませんでした。

チュイフォン茶園と同じような将来の展望が、事業体としてのカヤン首長族の村やそこを構成する人々に開かれていたらいいな。カフェで抹茶アイスを食べながら、そんな埒もないことを考えていました。 

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