街の象徴ともいえるヒンドゥー教寺院
ティルヴァナンタプラム(Thiruvananthapuram)の中心部に、街の象徴ともいえるヒンドゥー教寺院があります。パドマナーバスワーミ寺院(Sree Padmanabhaswamy Temple)です。主祭神はヴィシュヌ神(Vishnu)の化身であるパドマナーバ神(Padmanabha)で、寺院名の「パドマナーバ」は「へそから蓮の花が生じた者」というヴィシュヌ神の異名に由来しています。
ヴィシュヌ神は、ブラフマー(Brahma)やシヴァ(Shiva)とともにヒンドゥー教三大神の一柱で、世界を守護・維持する神としてインド全土で広く信仰されています。ケララ州(Kerala)を代表する巡礼地であり、現在も多くの参拝者が訪れています。一方で、現在も寺院内部への立ち入りはヒンドゥー教徒に限られており、一般の観光客が寺院内部に立ち入ることはできません。
寺院創建の起源は伝承的には古代(少なくとも8世紀以前)に遡るとさます。現在の壮麗な寺院は16~18世紀にトラヴァンコール王国(Kingdom of Travancore)の歴代国王によって整備されました。王家はヴィシュヌ神を国の真の統治者と位置付け、自らをその僕として国を治めたことでも知られています。そのため、この寺院はトラヴァンコール王国の歴史と深く結び付いた特別な存在です。
寺院の象徴東門のゴープラム
ヒンドゥー教の教義の深い部分やヒンドゥー教の中でのパドマナーバスワーミ寺院の位置付けに関しては、正直私の理解の及ぶところではありません。ヴィシュヌ神を祀る重要な寺院でありケララ州を代表する巡礼地であるという程度の知識しか持ち合わせていません。
それでも、寺院東門にそびえるゴープラム(Gopuram)の壮麗さには、ただただ圧倒されます。ゴープラムとは、南インドのドラヴィダ様式寺院に特徴的な巨大な塔門で、聖域と俗世を分ける結界であると同時に、信仰の世界への入口を象徴する存在です。これほど見事な建築を前にすると、思わず頭を垂れたくなるような気持ちになります。境内に入り、間近でその姿を見られないのが残念でなりません。
とはいえ、私はヒンドゥー教徒ではありません。寺院内部への立ち入りが制限されている以上、その決まりを尊重するのは当然です。寺院の周囲を歩きながら、その荘厳な雰囲気に触れるだけでも十分に価値のある体験でした。

寺院の周囲
中には入れないものの、できる限り周囲を巡って撮った写真が以下です。特にすぐ下の写真、東門に続く表参道(という表現が適切かはわかりませんが)からゴープラムを撮りました。参道左に伝統衣装をまとって上半身をはだけさせた一群の人々いますが、これが参拝時の服装規定とのことです。



イースト・フォート
パドマナーバスワーミ寺院から東に数分歩くとイースト・フォート(East Fort)の城門が道を囲むように建っています。18世紀にトラヴァンコール王国によって築かれた城郭の東門です。赤レンガ造りの城門は、ティルヴァナンタプラムを代表する歴史的建造物の一つで、城壁の一部が現在も残されています。
トラヴァンコール王国は、現在のケララ州南部とタミル・ナードゥ州(Tamil Nadu)南部を領土とした王国です。18世紀にマールタンダ・ヴァルマ王(Marthanda Varma)によって勢力を拡大し、イギリス統治時代には藩王国(Princely State)として存続しました。先にも触れたように歴代の王はパドマナーバスワーミ寺院を王家の守護寺院として篤く崇敬し、自らをヴィシュヌ神の僕と位置付けて統治したことで知られています。
写真のように、城門の前ではオートリクシャーやバイク、乗用車が絶え間なく行き交い、夕暮れ時にはひときわ活気に包まれます。約250年前に築かれた城門が、今もなお市民生活の中心に溶け込み、日常の風景の一部となっているのが印象的でした。



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