世界一周2回目後半 no.14 – 動物大国ニュージーランドで動物愛護を考える その1

animal-in-NZ ニュージーランド
ニュージーランドの典型シーンでしたが…

羊の数は減っている

道路を羊が埋め尽くし車はその通過をじっと待つ。トップの写真がそれですが、このような光景がニュージーランドの典型的な風景だと思っていました。

ニュージーランドの南島は1984年以来実に42年振りの訪問です。前回も同じ季節、車で今回と似たコースを廻っています。その時は比較的頻繁にこの光景にお目にかかりました。正にニュージーランドの典型シーン。その時はそう思いましたし、事実そう思って間違いはなかったと思います。

実は今回、トップの写真のような光景に出会ったのは一回きり、その時に撮った「貴重な」一枚なのです。しかも撮影場所はロブ・ロイ・グレイシャー・トラック(Rob Roy Glacier Track)に向かう未舗装路、要はかなりの僻地だったわけです。42年前とは明らかに状況が違う、そう思わざるを得ません。

そこで気になり、ニュージーランドでの羊の飼育数を調べてみました、参照として人口の変化も加えて作成したのが下の図です。以前と状況が違うとの私の直感は正しかったのです。飼育されている羊の数は減っていました。

【図表1】ニュージーランドの羊の飼育数と人口の推移
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出典: Te Ara – The Encyclopedia of New ZealandStats NZUN Population Divisionの資料を基に一部推計

何故、羊の飼育数は減ったのか

図表1を見ていただければ明らかなのですが、まさに私が最初に訪れた1984年頃が飼育数のピークだったわけです。これ以降飼育数は減少の一途を辿り、最盛期には約7,000万頭であった飼育数が2024年には2,400万頭を切るまでになっていま。なんとこの40年間で1/3になっています。

この間人口は伸び続けています。一人当たりの羊の数で見れば、1980年代初頭の最盛期には22頭/人であったのが直近では5頭/人以下となっています。もちろん今でも羊の多い国ではありますが、「羊だらけの国」というイメージは既に過去の話に近いといえるでしょう。

すると、何故このような変化が起きたのか。気になるところです。色々調べたところ、順不同ですが以下の要因が考えられています。

  • 収益性の高い酪農(乳牛)への転換 – 1980年代の農業補助金撤廃をきっかけに羊毛よりも収益性の高い生乳生産(酪農)へシフトする農家が増え、多くの牧草地が羊から乳牛の放牧へと切り替わりました。
  • 林業地(植林)の拡大 – 気候変動対策としての「カーボンオフセット(炭素排出の相殺)」を目的に、牧草地を森林(植林地)に変える動きが近年加速しています。これは松などの植林による収益が羊の飼育を上回るケースが増えているからです。
  • 生産効率の向上 – 1頭あたりの肉の生産量や繁殖率(双子の増加など)が向上しているため、少ない頭数でも収益を上げられる構造となってきています。この結果、羊肉の生産量の大幅な減少が抑えらる中、飼育数自体は大きく減少しました。
  • 国際羊毛市場の変化 – 合成繊維の普及により、かつての主力産業だった羊毛の需要と価格が長期的に低迷しています。これも羊離れを招いた大きな要因となっています。

何故か感じる不思議な違和感

上記した要因はどれもなるほどと納得できるものです。その結果として羊の飼育数が減ったのも、現代社会のメカニズムの中では自然なことなのでしょう。羊は人に 飼われ、育てられている動物です。であれば、人の社会のメカニズムのなかで飼育数が増減(専ら減少ですが)することは当然のことでもあります。

そうしたことは全て理解した上で、羊という種の存在が人によってコントロールされ、最盛期に比べ1/3にまで減少させられていることに、何とも言い表し難い違和感を覚えるのです。同じことが人で起きたなら、これは「民族浄化(Ethnic cleansing)」とも呼ばれる事態です。

もちろん人と羊は違います。羊は人によって飼われているのです。また、個々の羊が残確に殺されているわけでもありません(ニュージーランドは動物愛護大国で、愛護の対象には飼育されている動物も含まれます)。であれば違和感とは何なのか。わかりません。ただ、かつてと比べ体感的にも少ないと感じた羊の群れを見ての正直な感想がそれでした。

のんびりと草を喰む羊。ニュージーランドにいる個々の羊はきっと幸せに暮らしているのだと思います。
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