国立博物館の新館
今日(2025年7月9日)は16:40プラハ発の列車でウィーンに向かいます。宿をチェックアウトした後、列車の時間までどう過ごすか。博物館や美術館が好きな私は、プラハの駅近くに位置する国立博物館に行くことにしました。その際に荷物はどうするか。持って歩くのは論外、宿に預けるのもありですが博物館から駅の反対側にある宿まで預けた荷物を取りに戻るのも面倒。そこで駅構内にある手荷物預かり所を利用することにしました(この辺の詳しいところはプラハからウィーンに向かう道中に関する次の投稿記事に載せます)。
さて国立博物館です。新館と本館があり、両建物は地下通路で繋がっています。本投稿記事のトップ写真は複数の写真の組み合わせですが、左上が本館の建物、左下は新館です。右側は本館の内部となります。本館がいかにもな建物であるのに対し、新館は現代の風情です。下の写真は新館内部から中庭的な部分を撮ったものですが、この建物の雰囲気がわかってもらえると思います。

実際この建物は1937~1942年にかけてプラハ証券取引所の建物として建設されました。しかし第二次世界大戦の影響で本来の目的で使われることはほとんどなく、戦後国有化されました。共産党政権の下で行政施設やチェコスロバキア連邦議会の議事堂として使用されましたが、1993年のチェコスロバキアの解体(チェコとスロバキアに分離)後に役割を終えました。その後共産圏諸国へ自由な情報を発信するラジオ局として使われた後、2019年に国立博物館新館としてオープンしました。
近現代史を展示する新館
この建物自体がチェコの現代史を体現しているわけです。だからでしょうか、新館の主な展示内容は20世紀のチェコ史です。もちろん共産主義時代やその後の民主化の動き、そうした中での人々の暮らしなどです。主テーマからは外れますが企画展や子ども向け体験展示もありました。展示手法も映像やマルチメディアを多用しています。
下の写真はこの地の歴代大統領や政治家、文化人など、チェコの歴史に大きな影響を与えた人物の胸像の展示です。日本では馴染みのない人物も多く、正直私には知らない人々がかりでした。ただ、第一次世界大戦後の独立、ナチス・ドイツによる占領、共産主義時代、そして民主化へと続くチェコの激動の現代史を理解する上では興味深い展示でした。

目を惹く一枚のポスター
私の興味を惹いた展示物に以下の写真のポスターがあります。もちろん図案からソ連による反ナチスのプロパガンダ目的で作られたポスターとは思いますが、実際どんな用途にどう使われたのか。そこにいたく関心を持ちました。そこで早速調べて見ることにします。

ポスター下部の文字はチェコ語で以下の内容が書かれています。
SMRT FAŠISMU! ファシズムに死を!
SVOBODU NÁRODŮM! 諸民族に自由を!
鉤十字(ハーケンクロイツ)は当然のことながらナチス・ドイツの象徴です。SSSRはソビエト社会主義共和国連邦のことです。要は上記のスローガンの下、ソ連がナチス・ドイツを攻撃している図柄のポスターなわけです。素直に解釈すれば第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下でのチェコでの対ナチス戦意高揚のポスターとなります。そうなのですが、あまりにも綺麗で上質な印刷に若干の違和感を禁じえません。そこでさらに深堀りして調べてみました。
書かれているスローガンの表現は戦後のチェコスロバキア共産党が広く用いた標語で、ソ連を「解放者」として強調する戦後のイデオロギーの宣伝文句です。特に「諸民族に」という語彙が使われている点はソ連の多民族解放思想を反映した戦後的な特徴なのです。こうした要素から、このポスターはナチスからの解放をソ連の功績として強調し、戦後の新しい政治秩序を正当化するためのプロパガンダ資料として制作されたものではないか、これが私の解釈です。もちろん実際にどうなのかは不明です(わかる方がいれば教えてください)。
新館から本館に向かう地下通路
新館から本館には地下通路を通って行くことができます。その途中にはチェコの歴史を感じさせる大型の彫刻が展示されていました。下の写真がそうなのですが、二人の天使(多分)が王冠を掲げ、中央にはボヘミア王国の紋章である二尾のライオンが置かれています。おそらく、ボヘミアの歴史的建造物を飾っていた装飾彫刻なのでしょう。

本館と新館を結ぶ地下通路では、通路の壁全面を使った映像の投影がなされていました。映像の内容はチェコの主に近現代の歴史です。10分程度の投影が繰り返されているのですが、内容はとても見応えがあります。20世紀のチェコの歴史を伝える写真や映像が次々と映し出され、まるで歴史の中を歩いているような感覚になります。私はこの通路に留まり、同じ映像を3回連続で見てしまいました。


数日前にアウシュヴィッツを訪れたばかりだっただけに、この時期のヨーロッパの波乱に待ちた歴史を改めて思い起こさせてくれた新館の展示でした。
建物自体が豪華な本館
地下通路を経て本館に入ります。こちらは博物館らしい博物館です。そもそもこの国立博物館は1818年に「ボヘミア祖国博物館(Patriotic Museum of Bohemia)」として創設されています。チェコの自然や歴史、文化に関する資料を収集・保存し、民族の歴史を後世に伝えることを目的としていました。本館の建物は、もちろんこの博物館のために1885年に着工され、1891年に完成しています。19世紀のネオルネサンス建築で、豪華な中央階段や装飾など建物自体が大きな見どころです。



博物館らしい展示の本館
展示内容もまさに博物館、鉱物・宝石、恐竜・化石、先史時代の解説、動物の進化などが中心です。特に好物の展示は圧巻でした。





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