世界一周 no.21 – ブリティッシュ・コロンビア大学内にある人類学博物館に行く 【2025年6月24日】

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ブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館の入口反対側外観

ブリティッシュ・コロンビア大学

バンクーバーといえばブリティッシュ・コロンビア大学(The University of British Columbia: UBC)。ということでブリティッシュ・コロンビア大学に行ってみることにしました。宿の近くからバス一本で行けます(自由に乗りこなせれば、バスって本当に便利)。慣れた感覚でB巣に乗ります。タップするパネルはバスの中に据え付けられています。

バス内部のタッチパネルです。バスは二車両連結で乗車定員は多いです。
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私の乗ったバスは、終点がブリティッシュ・コロンビア大学の中心部となっていました。そこから構内をブラブラ歩きます。北米の大学にありがちな緑豊かで広大なキャンパスです。スポーツ施設も充実しています。

大学構内の水泳関連施設のようですね。立派な施設です。
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大学のシンボル的な時計塔。ちなみにブリティッシュ・コロンビア大学はブリティッシュ・コロンビア州が設置した州立の大学です。1908年にカナダ最古の大学であるマギル大学(McGill University)のバンクーバー分校として設立され、1915年9月30日に独立した大学になったとのことです(Wikipedia先生の言)。

時計塔の存在は大学あるあるです。日本の大学でもよく見られる光景です。
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人類学博物館が目的地

ただブラブラしにブリティッシュ・コロンビア大学を訪れたわけではありません。目的地は大学構内にある人類学博物館(Museum of Anthropology at UBC)です。強い目的意識があってこの博物館を目指したわけではないのですが、旅先で博物館や美術館を訪れるのは結構好きです。思わぬ発見が期待できることもそうですが、知らなかったことを知るのは楽しみです。

館内に入ると大きなホールがあり、そこにはカナダ先住民の文化に因んだ巨大な木像が多数展示されていました。カナダ先住民が遺したオリジナルの作品なのか、そうしたアートに触発されて作成された近現代の作品なのか、私にはわかりませんでした。ただ、先住民の文化的遺産を残し伝えたいという雰囲気は、強く感じられました。

ブリティッシュ・コロンビア州の先住民のモニュメンタル・アートに影響を受けたカナダの芸術家、エミリー・カー(Emily Carr)の作品だそうです。
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下の写真はブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館の象徴ともいえる作品です。カナダのハイダ族の芸術家ビル・リード(William (Bill) Ronald Reid)による「ワタリガラスと最初の人々 (Raven and the First Men)」と名付けられた木造彫刻です。ハイダ族の創世神話に基づき、カラスがハマグリの貝殻から最初の人間を解放する様子を描いたものとされています。

彫刻の手前の女性は館内を案内してくれたボランティアの説明員す。
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博物館の裏側から外に出ると、西部海岸線沿い定住していたカナダ先住民の暮らしや住居を示す展示がリアルに再現、展示されていました。トーテムポールが多く見られますが、彼らの文化においてトーテムポールはとても重要な役割を担っていました。家の前や墓地などに立てられ、家系、紋章、伝説、歴史的出来事などを記録し伝えていたのだそうです。

先住民の住居と、その前に建てられたトーテムポールです。

収蔵品の中の仮面群

巨大な木像彫刻やトーテムポール以外にも多くの収蔵品が展示されています。そすいた中には多くの仮面も含まれています。

民族には、古くから伝わる神話やそれに連なる儀式が存在しています。もちろん民族独自の宗教的な行為と換言してもいいかもそれません。そうした儀式や行為では、仮面が使われることが多かったわけです。もちろん、単に装飾として作られた仮面もあったでしょう。

これらの仮面を目にすると、民族の記憶とでもいった不思議な感覚を思い起こさせられます。私が仮面に魅せられる所以でしょうか。

私が強い印象を持った仮面たちの写真です。
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カナダ先住民の苦難の歩み

ボランティアの説明で、カナダ先住民の苦難の歴史を垣間見ることができました。カナダのインディアン法(随分な名前ですね。内容は大幅に変更されているものの、2025年時点で法律は残存しています)では、1884年以降の改正で先住民の伝統儀式「ポトラッチ(Potlatch)」が禁止されました(それ以外にも「タマナワス(Tamanawas)」、さらに1895年には「サンダンス(Sun Dance)」や「渇きの舞(Thirst Dance)」などが禁止されました)。

これらの儀式は共同体の結束や富の再分配、精神的儀礼に深く関わるものでした。政府と宣教師は「同化政策」の一環としてこれらの儀式を排除しました。そう、キリスト教会は政府のこうした政策の一翼を担ったのでした。こうした苛烈な政策は1951年まで(一部の差別的政策は1985年まで)続きました。実質的な民族浄化政策だったわけです。もちろん現在ではこれらの政策は否定され、政府及び教会からは過去の過ちに対し公式な謝罪がなされています。

ブリティッシュ・コロンビア大学内人類学博物館における展示の姿勢だけでなく、バンクーバー空港で多く見かけた先住民由来の意匠を模した装飾の存在は、こうした歴史的な事実が背景にあるのだろうと感じました。

バンクーバー国際空港のカナダライン空港駅にある彫刻です。
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和解のポール

上で書いたような歴史を知ってGoogle Mapを見ていたら、ブリティッシュ・コロンビア大学の構内に「和解のポール(Reconciliation Pole)」と呼ばれる記述があることに気が付きました。

名前からこのトーテムポール由来に興味を持ち、調べてみました。その結果、先住民寄宿学校(Canadian Indian residential school system)という学校(制度?)の存在に行きつきました。これは先住民に対する同化政策として、カナダ政府が設置していた寄宿学校制度です。政府が資金を提供し、キリスト教会が運営していました。

そこで何をしていたのか。先住民の子どもたちを強制的に親から引き離すことで彼ら固有の文化や宗教の影響から隔離します。その上で、カナダの白人社会の文化に半ば強制的に同化させました。合法的な制度として、青少年を対象に実質的な民族浄化政策を実施したわけです。和解のポールの「和解」は、こうした過去の行いに対する先住民の赦しを意味しているということなのでしょう。

2017年4月1日、ブリティッシュコロンビア大学バンクーバーキャンパスの敷地内に、「和解ポール」と題されたポールが立ち上げられました。
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from Google Map

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