世界一周 no.36 – ブダペストに来たら是非訪れる場所、ブダ城その4(ハンガリー国立美術館)【2025年7月2日】

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ハンガリー国立美術館ドームからドナウ川北方を望む

ハンガリー国立美術館

ハンガリー国立美術館(Hungarian National Gallery / Magyar Nemzeti Galéria)は、中世から現代までのハンガリーの美術を一貫してたどれる美術館です。外国の名画を集めるというよりは、ハンガリーの美術がどのように生まれ育ってきたのかを見せることを目的としています。ブダ城王宮というハンガリーを象徴する場所の中に設置され、王権と文化の歴史が重なる空間を意識して展示が構成されているように思えます。

ブダ城王宮のまさに正面、ハディク・アンドラーシュ騎馬像奥に美術館の入口は位置しています。
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宗教画や王侯貴族のための美術から19世紀の国民意識の高まりを背景にした絵画や彫刻へと、幅広い展示がなされています。近代に至る中での作品群には、ハンガリーやハンガリー人に関したアイデンティティの追求が色濃く見られます。もちろんこれはハンガリーに限らず、国民国家の形成の中での普遍的なテーマであったと思います(素人考えです)。美術が特権階級(貴族や教会ですね)の庇護の下から脱し、民族のアイデンティティを形にする手段となったのです。

宗教画が集められた展示スペースです。
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そして近代・現代の展示では、戦争や体制の変化を経ながらも表現を模索し続けた芸術家たちの姿が紹介されています。それぞれの時代を生きた人々の感性や考え方を体現した作品群は、民族の文化史ともいえる趣を醸し出しています。

彫刻や彫像が集められた展示ホールです。
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ある女性の肖像

それっぽいことを書きましたが、所詮私は素人です。美術館のコンセプトや所蔵品の来歴よりは、純粋に気に入った作品を愛でる。そんな気持ちで館内を廻りました。そうした中で目に入る気に入った作品を以下に紹介します。まずは女性の肖像です。

この肖像画はラヨシュ・デアーク=エブネル(Lajos Deák Ébner)による「オティリア・エブネルの肖像(Portrait of Ottilia Ébner)」です。制作年は1985~1890年頃とされています。名前からもわかるとおり、モデルのオティリア・エブネルは画家ラヨシュ・デアーク=エブネルの親族でしょう。そのためこの肖像には、公式肖像画に施すような演出的要素は少なく、例えばモデルの視線に画家との近さが表れているのではと感じます。

モデルの女性はオティリア・エブネル(Ottilia Ébner)。私の調査によればですが、1926年に88歳で世を去っています。

描かれた絵それ自体もさることながら、描かれた人物がどのような人生を送ったのか、私はそんなことにより強く興味を惹かれます。モデルが歴史上の人物であれば情報を得ることは容易です。そうでない場合には、単に想像するだけです。彼女の場合も無理だろうと思いつつもwebを漁ってみました。すると、同年代の同一名の女性の写真がヒットしました。十分に写真が残せる年代です。

それが以下の写真です。Webでヒットした写真の解像度はとても小さく、それを生成AIで解像度を上げたものです。肖像画とは受ける印象が微妙に違いますね。写真の表情は厳しく、肖像画の表情は穏やかです。画家の目で捉えた親族の女性に対する印象が表現されているのかもしれません(あくまで写真と肖像画が同一人物であった場合の話ですが)。

Webで見つけたオティリア・エブネルの写真(改変後です。
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geni.comのdataを基に改変

私が惹かれた絵

オティリア・エブネルの肖像は、モデルとなった婦人が(多分)特定できた稀有の例です。そうでない肖像の中で私の心を惹いた絵を紹介させてください。

まず、以下の写真です。この絵はベルタ・ジェルティアンフィ(Berta Gyertyánffy)による「ジプシーの少女(Gypsy Girl)」と呼ばれる作品です。1860年頃に描かれました。画家は女性、それも伯爵夫人です。貴族の女性がロマという社会底辺層の少女(ジプシーは現在では差別用語とされ、代わりにロマという語が使われます)を描いたわけです。

伯爵夫人であったベルタ・ジェルティアンフィが描いたロマの少女です。

しかし描かれた絵からは、自らとは対極に位置する人間に対する特別な感情は読み取れません(私には、ですが)。描く対象に真摯に向き合い、目に映るありのままを描いたように感じるのです。少女のもの悲しげな視線は何を想い何を見つめているのか。ただ空虚なだけなのか。限りなく想像が掻き立てられ、そんな少女の表情に惹かれていきます。

次の写真ですが、アドルフ・フェニェシュ(Adolf Fényes)作の「未亡人(The Widow / Özvegyasszony)」です。1899年の作です。

今でもそうかもしれませんが、その当時の未亡人の生活は相当に困窮したはずです(もちろん、財産があるような人はそうではありませんが)。稼ぎ手がいない中、自らが稼ぐ手段や機会は限られます。この女性はどうやって生きてきたのか、生きていくのか。刺すようにこちらを見つめる視線が語るものは何なのか。それを思わずにはいられません。

さらに幾つかを簡単に

さらにあと何点か、気になった作品を簡単に紹介します。ヤーカブ・マラストーニ(Jakab Marastoni)が描いた女性です。地中海風の衣装を着ているようにも見えますが、それ以上の来歴はわかりませんでした(作者は画面の署名からです)。

ヤーカブ・マラストーニ(Jakab Marastoni)が描いた女性。マラストーニは19世紀半ばに活躍した画家です。
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次はアンリエット・バラバーシュ(Henriette Barabás)による若い女性の肖像です。1859年の作です。画家はその名前からもわかる通り、女性です。ハンガリー国立美術館で見れたのは、おそらく企画展かなにかで一時的に展示してあったからだと思います。

アンリエット・バラバーシュが描いた若い女性。次からは銘盤も撮影します。
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シュールな彫像たち

次は絵から離れてちょっとシュールなオブジェたちです。何の脈絡もなく、ただ私の目に留まった気になるオブジェを集めました。

冥界の王と、王に仕える獣の果て。私想像したストーリの中での彼らの役割です。
人里離れた深い森の中に佇む館の女主人と、そこに迷い込んだ旅人がコレクションとして留めおかれている。これも私のストーリーです。
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ドーム内の展示「黙示録」

ブダ城王宮にはドームがあります。私のブダペストシリーズの投稿記事の中で何度か写真を載せているので、このドームの存在は記憶されている方も多いと思います。ドームは美術館の一部ともなっており、以下の写真はドームの内側です。

ワイヤーで吊るされている人々のオブジェが展示されているのですが、皆あまり楽しそうではありません(ピーターパンが飛んでいるような楽しさは全く感じられません、あくまで私の印象です)。ハンガリーの彫刻家レジェー・ベルツェッレル(Rezső Rudolf Berczeller)の作品で、「黙示録(Apocalypse)」との標題が付されています。

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キリスト教世界でいう黙示録とは、新約聖書の最後に登場する「ヨハネの黙示録」を指します。神が使徒ヨハネに啓示して見せた世界の終わりや未来の出来事が記された書物です。それは戦乱や飢餓、大地震などこの世の終末を予感させるものでした。こうした内容から転じて、「世界の終末」や「破滅的な状況」、「未来への警鐘」などを意味する一般用語としても使われます。

さて、以上の意味を踏まえてこの展示に何を見るか。正直にいって私は「空を舞っている人々は楽しそうではないな」という印象以上の何かを感じることはできませんでした(そもそも、その時点では黙示録の詳しい意味も知りませんでしたので…)。

ドームからの展望

ドーム内の展示に関しては単純な感想しか持たなかった私ですが、ドーム外側のテラスからの展望にはいたく感動しました。そう、脇の狭い階段を上ってドーム外側に出られるのです。そこからの展望が本投稿冒頭のトップの写真と以下の写真です。晴天の中、素晴らしい眺望でした。

トップの写真はキャプションにも記したとおり、ドナウ川の北方方面を望んだ写真です。セーチェーニ鎖橋が手前に、そしてドナウ川内に浮かぶマルギット島(Margaret Island)がその奥に見えています。下はドナウ川南方を望んだ写真です。ここが遥かに続くハンガリー大平原(Great Hungarian Plain / Alföld)の果てであることが何となく理解できます。

ブダ城ドームからドナウ川南方を望んだ写真です。
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